1.【背景】「おひとり様」が増えている社会背景

総務省の統計によりますと、65歳以上の単身世帯は年々増加の一途を辿っています。

さらに、国立社会保障・人口問題研究所の予測では、2020年代後半から2030年代にかけて、生涯未婚率は男女ともに過去最高を更新すると見られています。

これは、今後「ひとりで老後を迎え、看取られ、そして死後を迎える」方が確実に増えていくことを意味しています。

「自分が病気になった時、誰が面倒を見てくれるのだろうか？」 「もしものことがあったら、住んでいる部屋はどうなるのだろうか？」

といった漠然とした不安が、多くの「おひとり様」の間に広がり、それが終活へのニーズを強く押し上げています。

この社会の変化は、社会全体で支え合う仕組みや、個人の準備の重要性を示唆していると言えるでしょう。
 

2.【理解】終活とは？おひとり様に必要な理由

「終活」と聞くと、「死の準備」というネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、終活とは、ご自身の人生の終わり方について考え、より良い未来のために今できることをする、いわば「ご自身の人生をご自身でデザインする」ための前向きな行動です。

特に「おひとり様」の方にとって、終活は非常に重要となります。

なぜなら、ご家族やご子息に頼ることが難しい場合が多いからです。

ご自身の財産管理、もしもの時の住まい、医療に関する意思決定、そして死後の事務処理に至るまで、ご自身で決めておかなければならないことが多くあります。

最も大切なのは、「もし何かあったとき、誰に何を託すのか」を明確にし、それを可視化しておくことです。

これをしておくことで、万が一の時に周りの方にご迷惑をおかけすることなく、ご自身の意思をしっかりと反映させることが可能になります。
 

3.【準備】今から始める終活｜おひとり様のための5つの備え

「おひとり様」の方が安心して老後を過ごし、そして人生の終焉を迎えられるよう、今からできる5つの具体的な準備をご紹介いたします。

① エンディングノートを書く

エンディングノートは、法的な効力はないものの、ご自身の気持ちや希望を自由に書き残せるツールです。

医療や介護の希望、葬儀や埋葬の希望、大切な方へのメッセージなど、内容は多岐にわたります。

手書きのノートはもちろん、アプリやPDFなど多様な形式がありますので、ご自身に合ったものを選んでみましょう。

定期的に見直すことが大切です。

② 遺言書の作成

遺言書は、法的な効力を持つ文書で、特に財産に関することを明確にする際に重要です。

法的に有効なのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が一般的です。

もし重要な資産がある場合は、トラブルを避けるためにも弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスを受けることを強くお勧めいたします。

③ 見守り・死後事務の委任先を決める

ご親族がいらっしゃらない場合、もしもの時にご自身の身の回りのことや、死後の手続きを誰かに託す必要があります。

行政書士やNPO法人、信頼できるご友人などに「死後事務委任契約」や「任意後見契約」を結んで、ご自身の意思を尊重してもらえるよう備えておきましょう。

これは、「誰に、何を、どのようにしてほしいか」を具体的に決めることにつながります。

④ 生前整理・デジタル整理

物理的な物の整理だけでなく、スマートフォンやパソコンの中にある写真、SNSのアカウント、ネットバンキングのログイン情報といった「デジタル遺品」の整理も忘れてはなりません。

これらが残されたままだと、個人情報の流出やご遺族への負担につながることもありますので、パスワードの管理方法やアカウントの扱いについて方針を決めておきましょう。

⑤ 自分らしい葬儀・お墓の選択

終活を進める上で、多くの方が悩まれるのが、ご自身の葬儀やお墓についてです。

伝統的なお墓を建てることには費用や維持管理の負担が伴うため、「お墓を持たない」という選択肢が近年注目を集めています。

具体的には、故人のご遺骨を自然に還す「散骨」、シンボルツリーの下に埋葬する「樹木葬」、承継者がいなくてもお寺や霊園が永続的に供養・管理してくれる「永代供養墓」など、多様な選択肢があります。
 

これらの方法は、従来の形式にとらわれず、ご自身の価値観やライフスタイルに合わせた供養の形を選べる点が大きな魅力です。

例えば、自然を愛する方には散骨が、子孫に負担をかけたくない方には永代供養墓が選ばれる傾向にあります。

いずれも、後々「お墓をどうするか」という問題を抱えずに済むため、特に「おひとり様」の方にとっては、精神的な負担を軽減し、心穏やかに老後を過ごすための大切な準備と言えるでしょう。

ご生前にご自身の希望を明確にしておくことで、後悔のない選択が可能になります。
 

4.【年代】終活に対する世代別の意識

終活に対する意識は、世代によって少しずつ異なっています。

40代・50代では、ご両親の終活に直面されたり、ご友人・知人の身近な死を経験されたりすることで、「自分の準備もそろそろ始めなければ」と考える方が増えています。

ご両親の終活を通して、終活の具体的な内容や大変さを肌で感じ、ご自身の将来に備えようとする意識が高まっているのです。

一方で、60代以上になりますと、「ひとりで死を迎えるかもしれない」という現実感がより強く、具体的に行動を起こす後押しになっています。

ご自身の体力や判断能力が衰える前に、できることから始めておこうという切実な思いが背景にあるのです。

そして、若い世代でも終活を前向きに捉える方が現れています。

これは「推し活の延長」のように、ご自身の好きなものを最後まで大切にするという考え方や、「ソロライフ志向」で自立した生き方を尊重する価値観が影響していると言えるでしょう。

終活はもはや、年齢に関係なく、ご自身の人生をより良く生きるための手段として広まっているのです。
 

5.【まとめ】おひとり様こそ、終活を「今」から始めましょう

終活は、ご自身の未来に責任を持ち、ご自身らしい人生の終わり方を実現するための大切な行動です。

「もしものとき」に備えることで、今の生活にも安心と余裕が生まれます。

不安を解消し、心穏やかに日々を過ごすためにも、終活は非常に有効な手段です。

特に「おひとり様」だからこそ、終活は誰かのためではなくご自身のための、ポジティブな準備です。

完璧を目指す必要はございませんので、まずはエンディングノートを書いてみる、遺言書について調べてみるなど、今日からできることから始めてみませんか。

きっと、今の自分にとっても、未来の自分にとっても、良い結果につながるはずです。