和布刈神社が海洋散骨で注目を集めた理由

「お墓不要」時代の新供養ビジネス
和布刈神社は、なぜ神社として海洋散骨を始めたのか。
供養の変化から事業成長の背景、独自の取り組みまで詳しく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
1.【概要】「神社が散骨」新供養スタイルの衝撃

福岡県北九州市の和布刈神社は、1800年以上の歴史を持つと伝えられる神社です。
現在では海洋散骨や神前葬などでも知られていますが、こうした取り組みは最初から順調だったわけではありません。
2009年に高瀨和信氏が神社の運営を任された当時、年商は約500万円。
収入の多くを正月に頼る状況だったと報じられています。
和布刈神社が海洋散骨を始めたのは2014年です。
墓の維持に負担を感じる人や、自然に還る供養を望む人の声に着目し、神社として新しい弔いの形に取り組みました。
ここで注目したいのは、単に「新しい収益源をつくった」という点だけではありません。
神道には葬送の歴史があり、和布刈神社ではその考え方と海洋散骨を結びつけながら、現代の供養に対応する形を整えていきました。
📌 取り組みが広がった背景
✔ お墓を維持する負担を減らしたい人がいる
✔ 自然に還る供養を希望する人がいる
✔ 神職による供養を望む人もいる
2024年の報道では、海洋散骨を始めてから供養した遺骨はおよそ3,000にのぼるとされています。
2009年に約500万円だった売上は、2017年頃には5,000万円を超えたとされており、海洋散骨を含む新しい取り組みが神社運営の転換点になったことがうかがえます。
ただし、現在の売上すべてが海洋散骨によるものではありません。
和布刈神社はその後、神前葬や終活関連の取り組みへ事業を広げています。
2.【需要】墓を持たない供養が増えた理由

和布刈神社が海洋散骨を始めた背景には、神社側の取り組みだけでなく、供養に対する社会の変化があります。
かつては「家のお墓を代々守る」という考え方が一般的でした。
しかし、家族の暮らし方が変わり、お墓を引き継ぐことが難しい家庭も増えています。
📌 お墓について考える事情も変化
✔ 子どもや親族にお墓の管理を任せにくい
✔ 遠方にあるお墓へ通うことが難しい
✔ 墓じまい後の遺骨の行き先を考える必要がある
✔ 自分の代で供養を完結させたい人もいる
こうした事情から、従来のお墓だけではなく、永代供養墓や納骨堂、樹木葬、海洋散骨など、供養の選択肢は広がっています。
お墓を持たない選択をしても、故人を偲ぶ気持ちまでなくなるわけではありません。
形を残す供養を選ぶ人もいれば、海洋散骨のように遺骨を自然へ還す方法を選ぶ人もいます。
海洋散骨も、こうした選択肢の一つです。
お墓の承継や管理を必要としない一方、一度散骨した遺骨は基本的に元へ戻せないため、家族や親族との話し合いも欠かせません。
つまり、「お墓が不要な時代になった」という単純な話ではなく、家族構成や暮らし方の変化によって、それぞれの事情に合った供養を選ぶ時代へ移りつつあると考えた方が実態に近いでしょう。
和布刈神社の海洋散骨は、こうした変化の中で生まれた選択肢の一つです。
では、一般的な散骨事業者とは何が違うのでしょうか。
3.【仕組】神社が手がける海洋散骨とは

和布刈神社の海洋散骨で特徴的なのは、神社が弔いの一つとして散骨に関わっていることです。
海洋散骨そのものは民間事業者も数多く手がけていますが、和布刈神社では神職による祭祀と海洋散骨を組み合わせています。
遺骨を海へ撒くだけではなく、神道の考え方に基づいた弔いを取り入れている点が、和布刈神社の海洋散骨の特徴です。
現在は、遺族が乗船しない「委託散骨」、複数の家族が同じ船に乗る「合同散骨」、一組で船を利用する「貸切散骨」が用意されています。
| プラン | 特徴 | 料金 |
|---|---|---|
| 委託散骨 | 神職に散骨を委託 | 7万円 |
| 合同散骨 | 複数組で乗船 | 16万円 |
| 貸切散骨 | 一組で船を利用 | 29万円 |
※料金は和布刈神社が案内する逝去後申込みの基本料金をもとに掲載しています。
こうした複数のプランがあることで、乗船を希望する場合だけでなく、船に乗ることが難しい場合にも選択肢があります。
📌 海洋散骨だけを扱っているわけではない
✔ 神前葬など葬儀に関する取り組み
✔ 墓じまいに関する相談や支援
✔ 海洋散骨による葬送後の供養
ここで注意したいのが、「神前葬と海洋散骨が一つの料金に含まれたパッケージ」と考えてしまうことです。
和布刈神社では神前葬と海洋散骨の両方を扱っていますが、神前葬のプランによっては海洋散骨の費用が含まれていないことが公式サイトに明記されています。
「神前葬+海洋散骨」という一体型の商品だけを提供しているわけではありません。
それぞれの内容や料金を確認したうえで選ぶ必要があります。
和布刈神社の取り組みを「神社が散骨を始めた」という一点だけで見ると、その全体像を捉えることはできません。
葬儀から墓じまい、海洋散骨まで弔いに関する選択肢を広げてきたことが、この事例を見るうえで重要なポイントです。
では、こうした取り組みは神社の運営にどのような変化をもたらしたのでしょうか。
次の章では、約500万円だった年商が1億円を超えるまでに成長した背景を、海洋散骨だけの成果と混同しないよう数字を整理しながら見ていきます。
4.【成長】年商1億円超へ成長した背景

和布刈神社の取り組みが注目された理由の一つに、神社運営の大きな変化があります。
2009年に高瀨和信氏が運営を任された当時、年商は約500万円だったと報じられています。
その後、海洋散骨をはじめ、神前葬や墓じまいなど弔いに関する事業を広げ、収入規模も大きく変化しました。
| 時期 | 報じられた規模 | 主な動き |
|---|---|---|
| 2009年頃 | 約500万円 | 運営改革を開始 |
| 2014年 | ― | 海洋散骨を開始 |
| 2017年頃 | 5,000万円超 | 事業が拡大 |
| 2024年報道 | 約1.4億円 | 終活事業などを展開 |
| 2026年報道 | 約1.8億円 | 事業規模がさらに拡大 |
※金額は各時点の報道などで紹介された和布刈神社の事業規模を整理したもので、海洋散骨単体の売上を示すものではありません。
ここは、この事例を理解するうえで特に重要です。
和布刈神社は海洋散骨だけでなく、神前葬や墓じまいなど終活に関する取り組みを広げています。
そのため、「海洋散骨だけで年商1.8億円を達成した」と捉えるのは正確ではありません。
では、なぜここまで事業を広げることができたのでしょうか。
一つの理由として考えられるのが、海洋散骨を単独のサービスで終わらせなかったことです。
📌 成長の背景に見える取り組み
✔ 海洋散骨を新たな弔いの選択肢として提供
✔ 神前葬や墓じまいなど終活分野へ展開
✔ 他地域の神社へ仕組みを広げるFC展開
海洋散骨をきっかけの一つとして、葬送や終活に関する相談へ対応する範囲を広げてきたことが、和布刈神社の特徴といえます。
一方で、売上の増加だけを見て「海洋散骨は高収益な事業」と結論づけることもできません。
船舶の運航や人員、遺骨の取り扱い、安全管理など、海洋散骨にはさまざまな費用と運営体制が必要になります。
報道されている約1.8億円という数字は、事業規模を知る材料にはなります。
しかし、経費を差し引いた利益や海洋散骨だけの収益額まで示す数字ではありません。
売上の大きさだけから収益性を判断しないことが大切です。
和布刈神社の事例から読み取れるのは、「散骨を始めれば大きな利益が出る」という単純な成功モデルではありません。
供養を取り巻く変化を捉えながら、海洋散骨から神前葬、墓じまいなどへ対応範囲を広げてきたことが、現在の事業規模につながったと見る方が実態に近いでしょう。
さらに、この取り組みは和布刈神社だけにとどまらず、ほかの地域の神社へ仕組みを展開する段階へ進んでいます。
では、同じ方法を他の神社でも再現できるのでしょうか。
最後の章では、和布刈神社の取り組みが全国へ広がる可能性と、簡単には真似できない部分の両方から考えていきます。
5.【展開】この取り組みは全国に広がるか

和布刈神社の取り組みは、海洋散骨を神社の新しい収益源にしたというだけではありません。
神前葬や墓じまいなどへ対応範囲を広げ、さらにその仕組みを他地域の神社へ展開している点にも特徴があります。
実際に、和布刈神社が培った海洋散骨や葬送の仕組みは、ほかの地域の神社にもフランチャイズ形式で展開されています。
ただし、この事例をそのまま全国の神社へ当てはめることはできません。
📌 同じ方法がどこでも成立するとは限らない
✔ 海洋散骨を実施できる海域や運航体制が必要
✔ 遺骨を適切に扱うための知識が求められる
✔ 地域住民や漁業関係者への配慮も欠かせない
✔ 継続して対応できる運営体制も必要になる
特に海洋散骨は、船を用意すれば始められるという単純なものではありません。
厚生労働省は散骨事業者向けのガイドラインを公表しており、散骨場所への配慮や遺骨の粉状化、契約内容の明示、安全確保などについて一定の考え方を示しています。
和布刈神社の事例で注目したいのは、海洋散骨という一つのサービスだけではありません。
お墓を取り巻く環境や家族のあり方が変わるなか、従来の供養を大切にしながら、新しい選択肢にも対応してきた点にあります。
もちろん、一般のお墓や納骨堂、永代供養墓、樹木葬などを望む人もいます。
海洋散骨もその中にある一つの選択肢であり、どの供養方法が優れているかを一律に決めることはできません。
大切なのは、本人や家族がどのような供養を望んでいるのかを考え、それぞれの特徴を理解したうえで選ぶことです。
和布刈神社の事業規模が大きく成長したことは事実ですが、その結果だけを見て海洋散骨を高収益な事業と判断することはできません。
地域性や運営体制、供養への向き合い方など、複数の要素が重なった事例として見る必要があります。
和布刈神社が海洋散骨で注目を集めた理由は、「神社が散骨を始めた」という意外性だけではないでしょう。
時代とともに変わる供養への要望を捉え、神社としてできる弔いの範囲を広げてきたことに、この事例の本当の特徴があります。
お墓を守る供養もあれば、海へ還す供養もあります。
供養の形が多様になるこれからの時代に問われるのは、新しい方法を増やすことだけではなく、一人ひとりが納得できる弔いをどう支えていくかではないでしょうか。
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