1.【実は多い】故人の「推し活」グッズや趣味の遺品、どうする？

かつての遺品整理では、故人の持ち物は「思い出の品」か「不要品」かの二択になりがちでした。

しかし、現代ではそう簡単に割り切れない「第三の遺品」が増えています。

それが、故人の「推し活」グッズや特定の趣味にまつわるコレクションでしょう。

例えば、こんなものたちが故人の遺品として残されているのをご覧になったことはありませんか？

• アイドルやアニメキャラクターのグッズ： 大量の公式写真、アクリルスタンド、限定CD/DVD、ライブTシャツ、うちわ、ペンライトなど。部屋いっぱいに飾られていたり、大切に保管されたりしていることも多いでしょう。

• 熱中していたゲーム関連： 限定版ゲームソフト、フィギュア、攻略本、コラボグッズ、さらにはゲーム機本体やVR機器なども。オンラインゲームのアカウントも重要なデジタル資産です。

• スポーツチームの応援グッズ： ユニフォーム、タオル、観戦チケットの半券、選手のサイン入りグッズなど。

• 特定のジャンルの書籍・雑誌： 専門書、漫画の全巻セット、過去のバックナンバーなど、非常に大量に及ぶこともあります。

• 手工芸品や楽器： 故人が愛用していたミシン、編み物道具、絵画道具、ギターやピアノなどの楽器と楽譜。

これらは単なる「モノ」ではありません。

故人がどれほどの情熱を注ぎ、時間を費やしてきたかの証でしょう。

ご遺族にとっては、捨てるに捨てられない、特別な意味を持つ遺品となることが多いのです。
 

2.【なぜ悩む？】ただ処分できない、故人の「愛」が詰まった品々

故人の「推し活」グッズや趣味の遺品は、一般的な遺品とは少し違って、ご遺族の心をより複雑にするものです。

例えば、30代女性のAさんは、亡き妹が推していたアイドルのグッズを処分できずに悩んでいました。

「彼女の部屋に一歩入ると、まだそこにいる気がするんです。」遺品整理は、“モノ”ではなく“想い”と向き合う作業なのです。

なぜ処分に悩んでしまうのか、その理由を深掘りしてみましょう。

• 故人の愛情が深かったことを知っているから： ご遺族は故人がどれほどその趣味や「推し」を愛し、大切にしていたかを知っていることが多いでしょう。だからこそ、「これを捨てたら、故人の愛情を無駄にすることになるのでは？」という罪悪感を抱きやすいのです。

• 「故人の一部」のように感じるから： それらの品々は、故人の個性や人生の一部を象徴しています。それを手放すことは、まるで故人の存在そのものを消してしまうような感覚に陥ることもあるでしょう。

• 価値が分からず判断に迷う： 特に「推し活」グッズの中には、限定品やレアなものが多く、コレクターの間では高値で取引されることもあります。ご遺族にはその価値が分からず、安易に処分してしまって後悔したくないという気持ちも働くでしょう。

• ご家族間の意見の相違： 故人の趣味に関心がなかったご家族は「場所を取るだけ」と処分を望む一方、故人の趣味を理解していたご家族は「残したい」と考えるなど、意見が対立することもあります。

• 供養の概念にないから： 伝統的な供養には、故人の趣味の品をどう扱うかという明確なルールがありません。だからこそ、ご遺族は「どうすれば故人が喜んでくれるか」を手探りで考えることになるでしょう。

これらの理由から、故人の趣味の遺品整理は、単なる物理的な片付けに留まらず、ご遺族の精神的な葛藤を伴うデリケートな問題となっているのです。
 

3.【新常識】故人の趣味を尊重する供養・見送り方のアイデア

故人の「推し活」や趣味の品々を、ただ捨てるのではなく、故人への感謝と愛情を込めて見送る方法を考えてみましょう。

ここでは、現代ならではの新しい供養のアイデアをいくつかご紹介します。

• 「メモリアルコーナー」を設ける： 故人が特に愛用していたアイテムや、お気に入りのグッズを数点選び、自宅の一角に小さな**「メモリアルコーナー」**を設ける方法です。祭壇のようにかしこまる必要はなく、故人の写真と共に飾ることで、いつでも故人を身近に感じ、偲ぶことができるでしょう。

• 「形見分け」を工夫する： 故人の趣味を理解していたご友人やご親戚がいれば、価値が分かる人に譲るのも良い方法です。故人の愛用品が新たな場所で大切にされることは、故人も喜んでくれるはずです。SNSなどで呼びかける場合は、プライバシーに配慮し、信頼できる範囲で行うことが大切でしょう。

• 「供養品」として昇華させる： 故人の愛用していた衣類や生地を使って、クッションカバーや小物入れなど、新しい形にリメイクして供養品とする方法もあります。また、特定の神社仏閣では、人形供養やモノ供養として、故人の大切にしていた品を受け入れてくれる場合もありますので、相談してみるのも良いでしょう。

• 合同供養祭や追悼イベントを企画する： 故人が参加していたファンコミュニティやサークルがあれば、そのメンバーと協力して、故人を偲ぶ合同供養祭や追悼イベントを企画するのも、現代ならではの供養の形です。故人の好きな音楽を流したり、作品を展示したりと、「故人らしさ」を前面に出した温かい見送りができるでしょう。

• 「推し」のゆかりの地への散骨： 故人が特定の場所（例えば、アニメの聖地、応援していた球団の本拠地近くの海、好きなアーティストがライブを行った場所の近くの海など）に強い思い入れがあった場合、海洋散骨の選択肢を検討する際に、その場所の近くの海を散骨場所に選ぶこともできます。実際に、熱心なディズニーファンの方が、故人の願いを叶えるためにディズニーの見える海にへの散骨を希望されるケースもございます。故人の魂が愛する場所で安らかに眠ることを願う、究極の「推し活供養」と言えるかもしれません。

4.【デジタル推し活】SNSアカウントやオンライン活動の管理

現代の「推し活」は、物理的なグッズ収集だけでなく、SNSでの情報収集や交流、オンラインゲームなど、デジタル空間での活動も非常に大きいものです。

故人のデジタルな「推し活」遺品をどう扱うかも、ご遺族にとって新たな課題でしょう。

• SNSアカウントの取り扱い： 故人が使っていたSNSアカウント（X、Instagram、Facebookなど）は、単なる連絡ツールではありません。そこには、故人が「推し」に送った応援メッセージ、同じ趣味を持つ仲間との交流、イベント参加の記録など、故人の**「生きた証」**が詰まっています。

  • 対処法： 各SNSの規定に基づき、「追悼アカウント」に切り替える、あるいは完全に削除する選択肢があります。ご遺族が故人のアカウントにアクセスし、最後のメッセージを残すことで、故人の仲間たちに別れを告げることもできるでしょう。

• オンラインゲームのアカウントやデータ： 故人が熱中していたオンラインゲームのアカウントや、苦労して集めたアイテム、築き上げたコミュニティなども重要なデジタル遺品です。

  • 対処法： ゲーム運営会社に連絡し、アカウントの削除や、場合によっては引き継ぎの可否を確認します。故人のゲーム内のご友人に死を伝え、感謝を伝える機会を設けることも、故人の生きた証を尊重する行動です。

• デジタルコンテンツ（電子書籍、音楽、動画など）： 購入した電子書籍、ダウンロードした音楽や動画データなども、故人が愛したデジタル遺品です。これらはアカウントに紐づいていることが多く、引き継ぎが難しい場合が多いでしょう。

  • 対処法： アクセスが難しい場合でも、故人が何を愛し、何に触れてきたかを記録に残すだけでも意味があります。また、可能であればご家族で共有し、故人を偲ぶきっかけとすることもできるでしょう。

故人のデジタル空間での足跡も、故人の一部として尊重し、適切に管理することで、ご遺族は故人との新しい「つながり」を見つけることができるでしょう。
 

5.【もしもの時】生前に伝えておきたい「推し活」の意思

ご遺族が故人の「推し活」に関する遺品をどう扱うか悩まないように、何よりも大切なのは故人自身の意思を生前に伝えておくことです。

これは、現代における新しいエンディングノートの役割とも言えるでしょう。

• 具体的な指示を残す：

  • 「このグッズは特に大切なので、〇〇に形見分けしてほしいです。」

  • 「〇〇のSNSアカウントは、私の死後、追悼アカウントにしてほしいです。」

  • 「部屋のポスターやフィギュアは、処分せずに〇〇に引き取ってもらいたいです。」

  • 「もし可能でしたら、私の『推し』の曲を葬儀で流してほしいです。」

  • 「海洋散骨をするなら、〇〇の聖地の近くの海に散骨してほしいです。」 など、具体的に指示を書き残しておくと、ご遺族は迷うことなく故人の願いを叶えることができるでしょう。

• 「推し」への愛を語っておく： エンディングノートや、ご家族との日常会話の中で、なぜその「推し」や趣味を愛していたのか、どんな影響を受けたのかを伝えておくのも良いでしょう。ご遺族が故人の情熱を理解することで、より深い気持ちで遺品整理や供養に臨めるはずです。

• 信頼できる人に相談しておく： ご家族以外に、同じ「推し活」仲間や親しいご友人がいれば、その人にも自分の意思を伝えておくのも良い方法です。ご遺族が困った時に、相談に乗ってくれる存在がいると心強いでしょう。

生前に自分の「推し活」に対する思いを伝えておくことは、残されたご家族への最高の思いやりであり、故人の「らしさ」を未来へ繋ぐ大切な行為なのです。
 

6.【まとめ】「推し」と共に旅立つ故人へ、最高の「ありがとう」

故人の「推し活」や趣味の遺品をどう扱うかという問題は、現代の供養の多様化を象徴するテーマでしょう。

それは単なる物理的な整理ではなく、故人の個性、情熱、そして生きた証を尊重する、深い意味合いを持つ行為なのです。

ただ処分するだけでは得られない「後悔しない供養」は、故人が何に喜びを感じ、何を愛していたのかを理解し、その愛情に寄り添うことから始まるはずです。

デジタル遺品や物理的なグッズを通して、故人との「つながり」を感じ、感謝を伝えるへ、もし故人が望むなら、愛する「推し」のいる場所や、情熱を注いだ趣味のそばで永遠の眠りについてもらう事が何よりの供養になるでしょう。

あなたの大切な人が遺した「好き」のかけらを、どう未来へ繋ぎますか？

悔いなく、心から「ありがとう」の見送り方を──それが、令和の時代の新しい供養の形なのかもしれませんね。