公正証書遺言がデジタル化

ネット完結の条件と手順を解説
2025年10月より、公証役場へ行かずに自宅から遺言を作成できる新制度が運用されています。
デジタル化のメリットから、利用前に知っておくべき注意点などを解説します。
- 外出が困難で自宅から作成したい方
- スマホやPCで終活を進めたい方
- 遺言の紛失や改ざんを防止したい方
1.【制度概要】非対面での作成が可能に

これまでの公正証書遺言は、遺言者が公証役場へ出向くか、公証人が出張する「対面方式」が義務付けられていました。
しかし新制度により、原則として非対面(オンライン)での作成が可能になりました。
場所の制約を受けずに手続きができるため、多忙な方や入院中の方にとっても利便性が飛躍的に向上しています。
2.【電子署名】来場不要で完結する仕組み

「ネット完結」を実現する鍵は、ビデオ通話とマイナンバーカードの活用です。
💻 本人確認
ビデオ通話で公証人が遺言者の顔と意思を確認。
💻 電子署名
マイナンバーカードで署名。(英数字6〜16桁の暗証番号が必要)
💻 データ保管
完成した遺言は「電子原本」として公証役場で厳重保管。
3.【費用比較】デジタル版のコストと手数料

デジタル化によって、物理的なコストが抑えられるケースがあります。
| 項目 | 従来の紙方式 | デジタル方式 |
|---|---|---|
| 基本手数料 | 財産額による規定料金 | 従来と同等 |
| 出張費 | 訪問時に発生 | 原則不要 |
| 印紙代 | 必要(1通数千円程度) | 不要(データのため) |
※金額や取り扱いは、管轄の公証役場や内容により異なる場合があります。
4.【準備事項】作成前に揃えるべき必須項目

スムーズにオンライン作成を行うために、以下の準備を整えておきましょう。
✅ マイナンバーカード
電子署名の必須アイテム。
✅ 証人2名の確保
非対面でも、証人2名の同時オンライン接続が必要です。
✅ 安定したネット環境
途切れると中断の恐れがあるため、Wi-Fi環境を推奨。
5.【付言事項】散骨の希望は書ける?

公正証書遺言に「海洋散骨を希望する」と記すことは可能です。
ただし、供養方法は相続のような法的拘束力(強制力)を持ちません。
そのため、散骨の希望は遺言者の想いを伝える「付言事項(ふげんじこう)」として記載するのが一般的です。
公証人が関与し、日本公証人連合会の制度のもとで作成された文書に残すことで、家族が判断に迷った際の「重要な指針」となります。
「必ず散骨せよ」と強制するのではなく、「家族の負担を減らす選択肢として散骨を望む」といった、周囲に配慮した表現で想いを残すのが、実務上もっともスムーズな書き方です。
6.【注意点等】デジタルならではの落とし穴

非常に便利な制度ですが、実務上の留意点もあります。
まず、公証人の判断により、本人確認の確実性を期すために「対面への切り替え」を求められるケースがある点です。
また、オンラインであっても、本人が自分の言葉で内容を伝える「口授(くじゅ)」のプロセスは省略できません。
デジタル原本は紛失の心配がありませんが、「家族がその存在を知っていること」が供養や相続の第一歩です。
作成後は、信頼できる家族にデジタル遺言の存在を忘れずに伝えておきましょう。
制度を正しく理解した上で利用することが、後悔しない終活につながります。
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