日本で土葬はできる?法律と現実の壁を解説

火葬が主流の日本で土葬が難しい理由
日本では、土葬そのものが法律で一律に禁止されているわけではありません。
土葬に必要な許可や墓地の条件、実施できる場所が限られる理由をわかりやすく解説します。
この記事はこんな方におすすめ
1.【基本】土葬とはどんな埋葬方法なのか

土葬とは、ご遺体を火葬せず、棺などに納めて土の中に埋葬する方法です。
現在の日本では火葬が一般的ですが、土葬は決して海外だけの埋葬方法ではありません。日本でも古くから行われてきた歴史があります。
遺跡からはさまざまな埋葬の跡が確認されており、縄文時代には手足を曲げた状態で埋葬する「屈葬」なども行われていました。
その後も地域や時代によって方法を変えながら、土葬は日本の葬送方法の一つとして続いてきました。
✔ 土葬は、ご遺体を火葬せず土中に埋葬します。
✔ 火葬は、ご遺体を火葬したあとに遺骨を納めます。
✔ 現在の日本では、火葬が圧倒的に多く行われています。
世界に目を向けると、現在でも土葬が一般的な国や地域があります。宗教上の教えや地域の習慣、故人や家族の考え方によって、埋葬方法は大きく異なります。
そのため、「日本では火葬が普通だから、土葬は法律で禁止されている」と思われることもありますが、実際にはそうではありません。
「墓地、埋葬等に関する法律」では、「埋葬」とは死体を土中に葬ることと定められており、現在の法律にも土葬を前提とした規定があります。
自宅の庭や所有する山林などであっても、自由にご遺体を埋葬できるわけではありません。
法律では、埋葬は墓地以外の区域で行ってはならないと定められています。
つまり、日本では土葬そのものが全国一律に禁止されているわけではありません。
一方で、実際に土葬を行うには埋葬できる墓地を確保し、必要な手続きを行う必要があります。法律上認められていることと、現実に実施できることは別の問題なのです。
2.【法律】日本で土葬することは可能なのか

結論からいうと、現在の日本でも土葬そのものが法律で一律に禁止されているわけではありません。
「墓地、埋葬等に関する法律」では、火葬だけでなく、ご遺体を土中に葬る「埋葬」についても規定されています。
ただし、法律上認められているからといって、希望すればどこでも土葬できるわけではありません。
✔ 埋葬は墓地として認められた区域で行う。
✔ 埋葬を行うには市町村長の許可を受ける。
✔ 墓地側が土葬を受け入れている必要がある。
墓地埋葬法第4条では、埋葬を墓地以外の区域で行ってはならないと定めています。
そのため、たとえ自分が所有している土地であっても、墓地として認められていない自宅の庭や山林などへ自由にご遺体を埋葬することはできません。
さらに同法第5条では、埋葬や火葬を行う場合、市町村長の許可を受けることが定められています。
| 確認すること | 土葬の場合 |
|---|---|
| 法律上の扱い | 全国一律の禁止ではない |
| 埋葬する場所 | 墓地として認められた区域 |
| 行政手続き | 市町村長の許可が必要 |
| 墓地の確認 | 土葬を受け入れているか確認 |
ここで注意したいのが、「法律上は土葬できる」ことと「実際に土葬できる墓地が見つかる」ことは別の問題だという点です。
墓地の設置や管理には公衆衛生や周辺環境への配慮が求められ、地域によって墓地に関する条例や基準も異なります。
さらに、すでにある墓地でも火葬後の焼骨を納めることを前提としている場合があるため、土葬を希望する場合は、自治体だけでなく墓地の管理者にも事前に確認する必要があります。
日本では火葬が圧倒的に多いため、「土葬は法律で禁止されている」と思われることがあります。
しかし実際には、法律で全国一律に禁止されているのではなく、埋葬できる場所や手続きが定められていると考える方が正確です。
3.【条件】土葬できる場所が少ない理由

日本では法律上、土葬そのものが全国一律に禁止されているわけではありません。
それでも実際に土葬できる場所が限られているのは、墓地として認められているだけでなく、土葬に対応できる環境や管理体制も必要になるためです。
墓地に関する具体的な基準は地域によって異なりますが、周辺の住宅や学校、病院などとの距離、飲料水への影響、排水設備など、公衆衛生や周辺環境に配慮した条件が設けられている場合があります。
✔ 墓地として正式に認められた場所であること。
✔ 墓地の管理者が土葬を受け入れていること。
✔ 地域ごとの条例や墓地の規則を満たしていること。
✔ 周辺環境や公衆衛生への配慮ができること。
たとえば東京都の条例では、墓地の設置場所について、住宅や学校、病院などから一定の距離を確保することや、飲料水を汚染するおそれのない土地であることなどが定められています。
また、土葬を行う場合の墓穴については、東京都では深さ2メートル以上という具体的な基準があります。
墓穴の深さや墓地の設置条件などは、全国でまったく同じではありません。
土葬を検討する場合は、希望する地域の条例と墓地の規則を個別に確認する必要があります。
もう一つ大きな問題になるのが、墓地そのものが土葬を受け入れているかどうかです。
一般的な霊園や寺院墓地では、火葬された後の焼骨を納めることを前提としているところもあります。
その場合、法律上は土葬が認められている地域であっても、その墓地で土葬できるとは限りません。
そのため、日本で土葬を希望する場合は、「土葬は禁止されているか」だけではなく、実際に受け入れてくれる墓地があるかを確認することが重要になります。
4.【管理】地下水や周辺環境への配慮

土葬について調べると、「ご遺体の腐敗によって感染症が広がる」「地下水が汚染される」といった説明を目にすることがあります。
しかし、土葬されたご遺体が直ちに感染症の原因になると考えるのは正確ではありません。
世界保健機関(WHO)は、自然災害などで亡くなった方について、一般の人に感染症を広げる危険性は通常低いとしています。
ただし、特定の感染症で亡くなった場合などには、別の配慮が必要になります。
✔ ご遺体そのものを過度に危険視する必要はありません。
✔ 墓地の場所や地下水への影響には配慮が必要です。
✔ 土壌や地下水位などによって条件は変わります。
一方、ご遺体は土の中で時間をかけて分解されるため、墓地をどこに設けてもよいというわけではありません。
墓地の環境を考えるうえでは、地下水位や土壌の性質、井戸や河川など水源との距離、埋葬する人数など、さまざまな条件が関係します。
実際に墓地から地下水へ影響が及ぶ可能性については海外でも研究されており、墓地の立地や地質、水の流れなどを考慮することが重要とされています。
適切な場所を選び、周辺環境に配慮して管理することが重要です。
土葬そのものを一律に「危険」「不衛生」と考えるのではなく、墓地の立地や管理方法を分けて考える必要があります。
こうした理由から、墓地には飲料水への影響や排水などを考慮した基準が設けられることがあります。
土葬が難しい理由の一つは、ご遺体そのものが危険だからではなく、長期間にわたって埋葬する場所として適切な環境を確保し、管理していく必要があることにあります。
5.【保全】エンバーミングは必要なのか

土葬について調べると、エンバーミングという言葉を目にすることがあります。
エンバーミングとは、ご遺体に消毒や防腐、修復などの処置を行い、衛生的な状態で保全する方法です。
日本でも行われていますが、土葬をするすべての人にエンバーミングが義務付けられているわけではありません。
✔ 日本の土葬で一律に義務付けられているものではありません。
✔ ご遺体を衛生的に保全する方法の一つです。
✔ 海外搬送では必要となる場合が多くあります。
日本遺体衛生保全協会(IFSA)では、エンバーミングをご遺体を衛生的に安全に保全し、ご家族がお別れできる環境を整えるための処置としています。
そのため、火葬か土葬かという埋葬方法だけで必要性が決まるのではなく、ご遺体を安置する期間や状態、その後の搬送方法などによって判断することになります。
出典:一般社団法人 日本遺体衛生保全協会「エンバーミングの法的解釈」
📌 海外へご遺体を搬送する場合
宗教や文化上の理由から、日本で火葬せず、故人の母国で土葬することを希望するケースもあります。
その場合には、ご遺体を航空機などで海外へ搬送する方法があります。
海外搬送では、搬送先となる国の法律や規定、航空会社の条件などを確認し、必要な書類や棺、衛生上の処置を整えなければなりません。
海外へのご遺体の搬送では、エンバーミング証明書などを求められる場合があります。
必要な処置や書類は国や搬送条件によって異なるため、大使館や領事館、国際搬送を扱う専門業者への確認が必要です。
つまり、エンバーミングは「土葬だから必ず行うもの」ではなく、ご遺体の保全や海外搬送など、状況に応じて必要性を判断するものと考えるのが適切です。
6.【違い】土葬のメリットと課題を比較

土葬と火葬は、どちらも故人を弔うための方法ですが、ご遺体の扱い方や埋葬後の管理には大きな違いがあります。
日本では火葬が一般的ですが、宗教や文化、故人や家族の考え方によっては、火葬せずに土葬したいと考えることもあるでしょう。
ここでは、どちらが優れているかではなく、土葬と火葬にはどのような違いがあるのかを整理します。
| 比較項目 | 土葬 | 火葬 |
|---|---|---|
| ご遺体 | 火葬せず土中へ埋葬 | 火葬場で火葬 |
| 埋葬後 | ご遺体が土中にある | 焼骨が残る |
| 場所 | 土葬可能な墓地が必要 | 許可された火葬場で行う |
| 土地 | 棺を納める区画が必要 | 土葬より選択肢が多い |
| その後 | 墓地で管理 | 納骨や散骨などを選べる |
※実際の条件や管理方法は、自治体や墓地・霊園などによって異なります。
📌 土葬ならではの考え方
土葬には、ご遺体を火葬せず、そのままの状態で大地へ還したいという考え方があります。
また、宗教や文化によっては火葬を行わず、土葬することが大切な意味を持つ場合もあります。
こうした価値観を尊重できることは、土葬を希望する人にとって大きな意味があります。
📌 日本で土葬を選ぶときの課題
一方、日本で土葬を選ぶ場合に大きな課題となるのが、実際に土葬を受け入れている墓地を見つけることです。
火葬の場合は火葬後に一般墓や納骨堂、樹木葬などへ納骨するほか、一定の配慮のもとで散骨するという選択肢もあります。
土葬では棺を納められる墓地が必要になるため、希望する地域や家族の近くで受け入れ先が見つかるとは限りません。
どのように故人を送りたいかは大切ですが、実際の葬送では法律や墓地の規則、利用できる場所なども確認する必要があります。
特に土葬を希望する場合は、亡くなってから受け入れ先を探すのではなく、可能であれば事前に墓地や必要な手続きを確認しておくことが大切です。
7.【選択】日本で土葬を希望するときは

日本では火葬が一般的ですが、土葬そのものが法律で全国一律に禁止されているわけではありません。
実際に、厚生労働省の「衛生行政報告例」では、2024年度に全国で3,006件の「埋葬(土葬)」が報告されています。
ただし、法律上可能であることと、希望する場所で実際に土葬できることは別の問題です。
✔ 土葬を受け入れている墓地があるか。
✔ 自治体や墓地にどのような規定があるか。
✔ 埋葬許可など必要な手続きを確認する。
✔ 宗教上の決まりがあれば事前に相談する。
特に重要なのは、亡くなってから土葬できる場所を探すのではなく、可能であれば生前から受け入れ先となる墓地を確認しておくことです。
土葬に対応する墓地が見つかっても、地域によって条件が異なることがあるため、墓地の管理者と自治体の担当窓口の双方へ確認しておくと安心です。
自分の土地であっても、墓地として認められていない場所へ自由にご遺体を埋葬することはできません。
土葬を希望する場合は、受け入れ可能な墓地と必要な手続きを事前に確認することが大切です。
日本で土葬が身近な選択肢になっていない背景には、受け入れる墓地の少なさ、土地や周辺環境の条件、地域ごとの規定など、いくつもの事情があります。
一方で、宗教や文化によっては、火葬せずに故人を土へ還すことに大切な意味があります。
火葬と土葬のどちらが正しいというものではありません。
故人や家族の希望を大切にしながら、法律や地域のルールを確認し、実現できる方法を事前に考えておくことが大切です。
出典:政府統計の総合窓口 e-Stat「令和6年度 衛生行政報告例」
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