お墓を管理できない時は

増え続ける無縁墓

先祖代々のお墓を継承したは良いが、維持管理が負担となり悩む墓主は多く、全国的にも無縁墓地になっているケースは増えています。

お墓は管理をする人が誰もいなくなってしまうと、「無縁墓」となってしまいます。「墓じまい」を含む全国の改葬数は2021年度には11万8975件で、5年連続で10万件を超えています。

この「無縁墓」が全国的に増えていることをご存知でしょうか?

墓守のいなくなってしまった無縁墓は、残念ながら処分されることになります。

3年間管理費の支払いがない場合『お墓の権利をなくしお墓を処分する。』という契約になっている霊園なども多くあります。

処分された墓石は細かく砕かれて、道路工事用の砕石などとして再利用されています。

また墓に納められていた遺骨は、他の遺骨と合祀されてしまうので、あとから取り出すことは不可能となります。

ではなぜ、先祖代々のお墓を捨ててしまう人が近年増えているのでしょうか?

 

~contents~

1.【多様化】価値観の多様化

2.【不足】長寿による墓守不足

3.【孤立】おひとりさまのお墓問題

4.【契約】墓地を借りる契約

5.【永代供養】永代供養という選択

6.【必要か?】管理できないなら必要ない

7.【まとめ】まとめ

 

1.価値観の多様化

家を継ぐのは古い?

かつての日本人には、「長男が家を継ぐ」という考え方が常識でした。

先祖代々のお墓を管理する、墓守の役割は、家を継いだ「長男」が受け継ぐことがあたり前だとされています。

子どもが実家にいるのはせいぜい高校を卒業するまでで、大学に入学すると同時に実家を離れてしまうことは今では当たり前のことです。

そのまま就職して親とは別に暮らすというのが、今では日本人の一般的なライフスタイルではないでしょか。

それが長男であっても、家を出て行ってしまうことが普通になっています。

実家の近くに引っ越し家庭を持つような場合であれば、墓守を引き継ぐことも可能でしょう。

しかし、地方から都会に出てしまった子どもたちが、お墓の管理を続けて行くのは容易ではありません。

親が元気な時は、お盆や正月、ゴールデンウイークなど、大型連休を利用し実家に帰ったついでに墓参りに行くことはできるでしょう。

しかし、親が亡くなり実家を処分してしまうと、お墓を管理するためだけに『帰省をする。』というのは、難しくなってきます。

行きたい気持ちがあっても、お金と時間を使って、お墓を掃除しに行こうとは思えなくなってしまいます。

田舎にお墓がある場合、墓参りにはいかなくなり、やがては「無縁墓」となってしまう可能性が高くなります。

自分が生まれ育った地域で、死ぬまで生活を続ける。昭和の時代であれば大丈夫だったかもしれませんが、今は「令和」です。

時代に合わせて『お墓のあり方や存在意義を定義し直す必要があるのでは?』ないでしょうか。
 

長寿による墓守不足

長寿による墓守不足

科学の進歩により日本人が長生きになったことが、墓守をする人がいなくなる原因でもあると考えられています。

日本は世界でもトップクラスの長寿国になっています。

女性は平均寿命が87.7歳と90歳に迫る勢いです。

こうした高齢化が、実は無縁墓を生んでいる1つの理由になっているのです。

仮に90歳で亡くなった人の三十三回忌を誰がするのかという問題があります。

90歳で亡くなった人の三十三回忌をするころには、すでに子どもたちも亡くなっている可能性があります。

子供が親と離れて暮らしていると、孫たちも当然離れて暮らしていると考えられます。

そうなると、孫がおじいさんやおばあさんの三十三回忌をしなければならなくなります。

かつてのように三世代同居があたり前の時代であれば、孫がおじいさんやおばあさんのお墓を大切にしたいという気持ちをいだくかも知れません。

しかし、今や都心部だけでなく三世代同居は非常にまれです。

孫がおじいさんやおばあさんに会うのは、正月やお盆に帰省をしたときくらいというケースも多いでしょう。

たまにしか会ったことがなく、ほとんど記憶にも残っていないおじいさんやおばあさんのために、孫がしっかりと法事や墓参りをしてくれる可能性は決して高くはないのです。

日本人が長生きをするようになったことが、無縁墓やお墓の管理が出来ない皮肉を生み出す結果となっているのかも知れません。
 

3.おひとりさまのお墓問題

増える孤独な老人

天涯孤独のおひとりさまがお墓を捨てるケースも増えています。

日本では、年々未婚率が高くなっています。

2020年に行われた国勢調査によりますと、男性の生涯未婚率は25.7%、女性が14.9%となっています。

生涯未婚率というのは、50歳の時点で過去に1度も結婚をしたことのない人の割合です。

1985年の調査では、未婚率は男性が3.9%、女性が4.3%でしたから、ここ30年ほどで急速に増えているということが分かります。

厚生労働省の予測によると、2030年の生涯未婚率は男性が36%、女性が27%になるであろうとされています。

ちなみに“結婚・同棲相手、恋人は必ずしも必要ない”という若者の割合もここ5年で急増しているようです。

生涯独身者がどんどん増えて行くことによって、先祖のお墓をその子孫が管理をしていくという慣習が成立しなくなってしまいます。

生涯独身のおひとりさまが亡くなった場合、これまでその人が管理をしてきた先祖代々のお墓を管理してくれる人を探すことは非常に困難です。

誰も管理をする人がいなくなれば、そのまま無縁墓となります。

お墓が放置された状態になると、霊園や寺院ではお墓の前に看板を建てたり、戸籍をもとにお墓の継承者を探したりといったことをします。

それでも継続者が現れなければ、無縁墓はやがて寺院や霊園によって撤去されることになります。

そうして先祖代々のお墓は終わりを迎えるのです。
 

墓地を借りる契約

お墓というのは、その場所に不動産のように残しておけるわけではありません。

お墓を建てるときには、霊園や寺院に永代使用料を支払って、墓地を借りる契約をします。

墓地埋葬法という法律があるので、どこにでもお墓を建てるわけにはいきません。

許可を得ている場所を借りるわけです。

しかし、この「永代」というのはあくまでも、墓守がいて管理費を支払ってくれる人がいることが条件となります。

墓地の使用規則には「〇年以上管理料を収めない場合」や「墓地使用者が〇年以上不明になり、相続または継承の申し出がない場合」は、永代使用権が取り消しになるという契約になっています。

霊園や墓地によって違いはありますが、管理費の滞納が5年間ほど続くと、お墓は解体撤去されてしまうことがほとんどでしょう。

霊園や墓地としても、墓守がいなくて管理費もこのままずっと徴収できないということであれば、解体撤去も致し方ないといえます。

永代使用料の意味は永遠ではないのです。

あくまでも使用料でしかありません。

管理費が払えなければ撤去され、その場所には新たなお墓が建てられ、永遠に永代使用料の回収が行われるビジネススタイルとなっているのです。
 

永代供養という選択

先祖代々のお墓を放置して、そのまま捨ててしまう人が増えている昨今…

さすがにそこまで罰当たりなことはできないとの思いから「墓じまい」を選択する人も増えています。

「墓じまい」をして故郷にある先祖代々のお墓を自宅の近くの墓地に移したり、永代供養墓に遺骨を納め自分たちがお墓参りに行かなくても済むようにするわけです。

こうすることで、お墓参りや法事のたびに交通費をかけて遠く離れた生まれ故郷まで戻る必要はなくなります。

また、永代供養墓にすることで、十七回忌や三十三回忌などの費用もすべて初期費用に含まれている場合も多く、その後の墓地管理費用などを支払う必要もありませんので、金銭的な面でのメリットも大きいでしょう。

費用に関しては、10万円程度から200万円程と幅が大きく寺院の格式や設備によって金額が変わってくるようです。

ただ、こうした「墓じまい」もスムーズに行くとは限らず、寺院から高額な離檀料を求められたりしてトラブルになることも少なくないようです。

しかし永代供養といっても、未来永劫に供養をしてくれるというわけではありません。

寺院や霊園によっても異なりますが、三十三回忌までとなっているところが多いようです。

その期間がすぎると、最終的には他の遺骨と合祀されてしまうのが一般的です。

永代供養墓という選択をしても、最終的には無縁墓の遺骨と状態は同じ合祀になってしまうわけです。
 

管理できないなら必要ない

ローンを組んだり、借金してでも『お墓を建てなければ!』と考える人もいる一方で、お墓を建てないという選択肢を選ぶ人が増えていることをご存じでしょうか?

果たして、お墓って本当に必要なのか?

人が亡くなったらお墓を建て納骨し、代々お墓を継いでいくという事が当たり前のように行われてきました。

昔ながらの風習を重んじる人は、今でもお墓を建てる事にこだわりを持つのでしょう。

先祖代々のお墓は家を継いだ長男が受け継ぎ、管理することが当たり前だと思われていました。

この考えは、都会の都心部よりも地方の方が強いようです。

ですが、少子高齢化、核家族化が進む現代では、実家を離れて暮らす人も多くなり、お墓を継いでくれる人がいなくて墓じまいをする人が増えています。

そんな状況なので、「お墓を建てない」「お墓はいらない」という人も増えてきているのです。

お墓に対する考え方が多様化する昨今、お墓を建てて納骨するだけがよいご供養方法とは言えなくなっているのです。
 

まとめ

お墓を建て、きちんと管理をしてご供養できるようであれば問題ありません。

しかし、お墓の管理には時間や手間、さらには金銭的な負担も生じます。

そのため『親族全員の宗教感の意識が薄い。』『家族や親族間での交流が積極的ではない。』などの場合は、後継者の役目を押しつけ合いが始まることもあります。

しかしお墓を建てたり受け継いだばかりに、管理費に悩まされたり、親族とお墓の事でもめているという話も少なくありません。

今では、お墓を建てなくても、さまざまなご供養方法を選択できる時代です。

価値観の多様化や核家族化により、お墓に対する考え方も変わってきています。

自分達の身の丈にあったご供養方法を選ぶ事が、故人にとっての一番のご供養になるのかもしれません。

物や形にとらわれず、故人や先祖を想う気持ちが大切なのではないでしょうか。

50回忌…本当に出来るのでしょうか…

墓じまいをして『肩の荷が下りた…』との意見も聞きます。

墓じまい後の供養方法に、散骨を選ぶ方も多いように思えます。

皆さんは、お墓を受け継ぐ意味を誰かに説明出来ますか?

実は、高額なお墓ビジネスに『NO!』と言える時代になってきたのではないでしょうか…
 

 

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