無縁遺骨とは?増加の背景と最新実態

引き取り手のない遺骨が増える社会
全国の自治体では、引き取り手のない遺骨への対応が課題となっています。
身元が分かっていても、遺骨を引き取る人がいないケースもあります。
公的データをもとに、無縁遺骨の実態や背景、今からできる備えを解説します。
この記事はこんな方におすすめ
1.【定義】無縁遺骨とはどんな遺骨なのか

「無縁遺骨」と聞くと、身元が分からない人の遺骨を思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし実際には、身元が判明していても、親族がいない、親族と疎遠になっているなどの事情から、遺骨の引き取り手が見つからないケースがあります。
このように、亡くなった後に遺骨を引き取る人がいない場合などに、自治体が火葬や遺骨の保管、納骨などの対応を行うことがあります。
身元や親族が判明していても、遺骨を引き取る人がいないケースがあります。
📌 無縁遺骨となるケース
✔ 身元が分からず親族を確認できない
✔ 身元は分かっていても親族がいない
✔ 親族がいても遺骨の引き取りに至らない
そのため、「身寄りのない人だけの問題」と考えるのは実態と少し異なります。
家族や親族がいても、長期間の疎遠やさまざまな事情によって、亡くなった後の手続きや遺骨の行き先が決まらないことがあります。
無縁遺骨の問題を考えるうえでは、身元が分かっているかどうかだけではなく、亡くなった後に誰が遺骨を引き取るのかという点が重要です。
では、こうした遺骨は全国でどのくらいあるのでしょうか。
2.【実態】全国約6万柱が保管された背景

無縁遺骨は、実際にどのくらいあるのでしょうか。
総務省が全国の自治体を調査した結果、2021年10月末時点で、市区町村が保管していた引き取り手のない遺骨は約6万柱にのぼることが明らかになりました。
一方、厚生労働省が2025年に公表した調査では、2023年度に引き取り手がなく自治体が対応した遺体について、全国で推計4万1,969人という試算が示されています。
| 調査内容 | 人数・遺骨数 |
|---|---|
| 自治体が保管していた遺骨 | 約6万柱 |
| 2023年度の引き取り手のない遺体 | 推計41,969人 |
| 2023年の全死亡者に対する割合 | 約2.7% |
※調査時点や対象、集計方法が異なるため、それぞれ別のデータとして見る必要があります。
ここで注意したいのは、「約6万柱」と「約4万2,000人」を単純に比較できないことです。
約6万柱は、2021年10月末時点で自治体が保管していた遺骨の数です。
一方の4万1,969人は、2023年度に墓地埋葬法、行旅死亡人法、生活保護法に基づいて対応した件数などから、厚生労働省が全国の人数を推計したものです。
厚生労働省は、自治体への調査結果などをもとに算出した「粗い試算」としています。
2023年に国内で亡くなった人は1,576,016人でした。
厚生労働省の試算では、引き取り手のない遺体はその約2.7%に相当します。
数字だけを見ると割合は小さく感じるかもしれませんが、全国では年間数万人規模で自治体による対応が必要になっていることが分かります。
そして、この問題を考えるうえで見逃せないのが、身元が分からない遺骨だけが無縁になっているわけではないことです。
出典:厚生労働省「引き取り手のないご遺体の数に関する粗い試算」
3.【身元】身元判明でも引き取られない理由

無縁遺骨という言葉から、身元の分からない遺骨が多いと思われるかもしれません。
しかし、総務省の調査では違った実態が見えてきます。
2021年10月末時点で自治体が保管していた約6万柱のうち、身元不明だった遺骨は約1割でした。
残る約9割にあたる約5万4,000柱は、身元が確認されていた遺骨です。
無縁遺骨の多くは、身元が分からないことだけが理由ではありません。
では、身元が分かっているのに、なぜ遺骨の引き取り手がいないのでしょうか。
📌 引き取りに至らない主なケース
✔ 親族や引き取り手が見つからない
✔ 親族がいても長期間疎遠になっている
✔ 親族が遺骨の引き取りを希望しない
家族や親族がいることと、亡くなった後に遺骨を引き取る人がいることは同じではありません。
長い間交流がなかった親族から、亡くなった後に突然連絡を受けるケースもあります。
また、家族関係や生活環境は人によって異なるため、遺骨を引き取らない理由を一つに決めつけることもできません。
親族が確認できても、最終的に自治体が火葬や遺骨の対応を行う場合があります。
厚生労働省の手引きでも、身元が判明している人が亡くなり、遺体などの引取者がいない場合には、市町村が火葬などを行うケースが示されています。
つまり無縁遺骨の問題は、「身寄りのない人」だけに限った話ではありません。
亡くなった後の手続きや遺骨の行き先を誰が担うのかが決まっていなければ、家族や親族がいても自治体による対応が必要になる可能性があります。
出典:参議院「多死社会を迎え無縁遺骨の増加に関する質問主意書」
4.【法律】引き取り手がいない場合の対応

亡くなった方の遺体や遺骨に引き取り手がいない場合、自治体が状況に応じて火葬や保管などの対応を行います。
ただし、すべてのケースが同じ法律で扱われるわけではありません。
身元が判明しているか、身元が分からないかなどによって、対応の根拠となる法律が異なります。
| 主な状況 | 主な根拠 |
|---|---|
| 身元判明・引取者なし | 墓地埋葬法 |
| 身元不明 | 行旅死亡人法 |
| 生活保護を受けていた場合など | 生活保護法 |
身元が判明していても、火葬を行う人がいない場合には、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づいて死亡地の市町村長が火葬を行うことがあります。
一方、身元が分からず引き取り手も確認できない場合には、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」に基づいて自治体が対応します。
また、亡くなった方が生活保護を受けていた場合などには、生活保護法の葬祭扶助が関係するケースもあります。
亡くなった方の状況に応じて、複数の法律や制度に基づいて対応されています。
自治体が火葬した後も、遺骨をすぐに合葬するとは限りません。
一定期間保管しながら親族への連絡や引き取りの確認を行う自治体もあり、保管方法や期間、その後の納骨方法は自治体によって異なります。
そのため、引き取り手のない遺骨が増えるほど、火葬だけでなく、親族調査や遺骨の保管、その後の納骨まで自治体が担う場面も増えていきます。
5.【課題】自治体に広がる負担と地域差

引き取り手のない遺体や遺骨への対応は、火葬を行えば終わるわけではありません。
親族の確認や連絡、火葬の手配、遺骨の保管など、自治体にはさまざまな対応が必要になります。
📌 自治体が行う主な対応
✔ 身元や親族に関する調査
✔ 親族への連絡や引き取りの確認
✔ 火葬の手配や遺骨の保管
✔ 引き取り手がない場合の納骨
特に難しいのが、親族がすぐに確認できない場合や、連絡をしても遺骨の引き取りに至らない場合です。
自治体は戸籍などから親族を調べたり、連絡を取ったりしながら、その後の対応を進めることになります。
遺骨の保管期間や保管場所、その後の納骨方法などは自治体によって異なります。
総務省が行った調査では、引き取り手のない遺骨について、自治体ごとに保管方法や親族調査などの対応に違いがあることも課題として示されました。
こうした状況を受けて、厚生労働省は身寄りのない方が亡くなった場合の自治体向け手引きを作成し、親族への連絡や火葬、遺留金品などの取り扱いについて整理しています。
引き取り手が決まらないことで、自治体が遺骨を保管し続ける場合もあります。
無縁遺骨が増えることで必要になるのは、保管場所だけではありません。
親族調査や連絡などを行う職員の業務、火葬や保管、納骨に関する費用なども必要になります。
無縁遺骨の問題は、亡くなった本人や家族だけではなく、死後の手続きを誰が担うのかという地域社会全体の課題にもなっています。
6.【備え】無縁遺骨にしないためできること

無縁遺骨の問題は、身寄りのない方だけに起こるものではありません。
家族や親族がいても、亡くなった後の手続きや遺骨の行き先について話し合っていなければ、残された人が判断に迷うことがあります。
特に一人暮らしの方や、家族と離れて暮らしている方は、自分が亡くなった後のことを一度考えておくことも大切です。
希望する供養方法だけでなく、死後の手続きを誰に頼むのかも考えておく必要があります。
📌 生前に確認しておきたいこと
✔ 死後の手続きを誰にお願いするのか
✔ 遺骨をどのように供養してほしいのか
✔ 自分の希望を家族などに伝えているか
遺骨の行き先は、お墓だけとは限りません。
納骨堂や樹木葬、海洋散骨など、現在はさまざまな供養方法があります。
大切なのは、どの方法を選ぶかだけではなく、自分の希望を周囲に伝え、亡くなった後に誰が手続きをするのかを決めておくことです。
無縁遺骨が増えている背景には、単身世帯の増加や家族関係の変化など、現代社会ならではの事情があります。
だからこそ、自分や家族の死後について、元気なうちに話しておくことに意味があります。
「誰に任せるのか」「どのように見送ってほしいのか」を家族などと共有しておくことが、亡くなった後の迷いや負担を減らす備えになります。
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