なぜ寺院はキャッシュレス化しないのか?宗教とお金の“見えない壁”

キャッシュレス決済にした賽銭箱

キャッシュレス化の裏にある、宗教界の“見えない事情”

スマホひとつで買い物も、電車も、カフェも済ませられる時代。

それなのに──お寺でのお賽銭やお布施は、なぜか「現金」のままなのか?

普段はキャッシュレス生活の人でも、神社仏閣に行くときだけは「小銭があるかな?」と財布を探す。

そんな経験、ありませんか?

実はその裏には、宗教と税制が絡み合う“見えない壁”が存在しているのです。

本記事では、仏教界の反対理由から、実際に導入を進める寺院の事例までを深堀します。

そして、なかなか語られない「大人の事情」の正体にも迫ります。

 

 

1. キャッシュレス化はどこまで進んでいるのか?

寺院でキャッシュレス決済するためのスマートフォン

コンビニやスーパー、電車やバスでも、今やキャッシュレス決済が当たり前になりました。

国際的に見ても、日本はキャッシュレス化が遅れていると言われるほどです。

それでも、コロナ禍をきっかけに非接触型決済のニーズが急増し、スマホ1つで支払いが完了する「現金を持たない生活」が都市部を中心に広がっています。

そんな中、お賽銭やお布施のキャッシュレス決済を導入する寺院も登場しました。

現金が使えないキャッシュレス専用の自動販売機を置いたり、お守りの購入を電子マネーでできるようにしたりと、様々な試みが進められています。

とはいえ、その広がりはまだ限定的。なぜ寺院でのキャッシュレス化はスムーズに進まないのでしょうか?

 


 

2. なぜ宗教界はキャッシュレス化に反対するのか?

寺院のキャッシュレス化のためのqrコード

一部の仏教界からは、お布施のキャッシュレス化に異議を唱える声も上がっています。

数年前には京都仏教会が反対の声明文を発表しました。
 

京都仏教会の見解(要約)

  • 宗教活動はビジネスとは異なる
    :お布施は、信者の心や魂を仏様に捧げる行為であり、対価取引の営業行為とは根本的に違う。

  • 個人情報漏洩や信教の自由への懸念
    :キャッシュレス化によって信者の活動や個人情報が第三者に把握されるリスクがある。

  • 課税対象になる可能性への懸念
    :手数料が発生することで、非課税である宗教活動が収益事業と見なされる恐れがある。
     

このように、宗教活動と世俗的なビジネスを明確に区別し、信仰の自由や信者のプライバシーを守るという強い意志が見て取れます。

その背景には、「税金」への懸念という大人の事情も含まれていると解釈できるでしょう。

 


 

3. 寺院におけるキャッシュレスのメリットとデメリット

キャッシュレス決済で購入したおみくじ

ここで改めて、キャッシュレス決済の一般的なメリットとデメリットを確認してみましょう。
 

メリット

  • 利便性の向上
    スマホやカードで簡単に支払いができるため、特に若い世代や外国人観光客にとっては便利です。

  • ポイント還元
    キャッシュレス決済を利用することで、利用者はポイント還元などのメリットを受けられ、寺院への参拝動機にもつながります。

  • 会計管理の容易さ
    現金の管理や集計の手間が省け、会計の透明性や効率性が向上します。

  • 防犯対策
    現金を扱わないため盗難や紛失のリスクが減り、寺院の安全面でもプラスになります。
     

デメリット

  • 対応店舗の限定
    まだ全ての寺院で導入されているわけではなく、利用できる場所が限られているのが現状です。

  • 使いすぎのリスク
    キャッシュレスは手軽な反面、支出の管理が難しくなる場合があります。

  • 情報漏洩のリスク
    決済情報や個人情報が第三者に流出する懸念があり、プライバシー面で不安を感じる人もいます。

  • 導入コストと手数料
    決済端末の導入費用や決済手数料が発生し、特に収入が限られる寺院にとっては負担が大きいことが課題です。
     

また、寺院にとっては非課税であるお布施が、キャッシュレス導入により課税対象とみなされるリスクもあり、この点が導入をためらう大きな要因となっています。

 


 

4. キャッシュレス決済を導入している寺院の事例

キャッシュレス決済を導入している寺院

仏教界の一部が反対する中でも、キャッシュレス決済を導入する寺院は着実に増えています。
 

  • 増上寺(東京)
    :年間約100万人が訪れる観光名所。御守りのキャッシュレス購入が可能です。

  • 正宣寺(大阪)
    :お布施の受納にクレジットカード、デビットカード、au PAYを導入しています。

  • 日光二荒山神社(栃木)
    :スマートフォンでお賽銭を納めるシステムにキャッシュレスを導入しています。

  • 愛宕神社(東京)
    :初詣期間の特定の日に限り、電子決済用のお賽銭箱を設置しています。
     

これらの事例を見ると、特に外国人観光客が多い観光名所が積極的に導入している傾向が見られます。

これは、利用者の利便性向上に加え、集まった硬貨の入金手数料を減らすという目的もあるようです。

 


 

5. まとめ:寺院とキャッシュレスの現在地

お布施をキャッシュレス決済する女性

宗教界ではキャッシュレス化に対する反対意見が根強いものの、時代の流れに乗る寺院も徐々に増えています。

キャッシュレス化の最大の壁は、宗教活動とビジネスの明確な線引き、そして「非課税」の特権を守りたいという税制上の課題にあります。

また、「お布施は現金で」という日本人の慣習や価値観も、キャッシュレス普及の大きなハードルとなっています。

外国人観光客の増加が導入の後押しになる一方で、寺院の経済活動にまつわるルールや社会的な仕組みが複雑に絡み合い、簡単には進まない現状があります。

つまり、寺院のキャッシュレス化は単なる技術や利便性の問題ではなく、税制や伝統、社会制度が絡み合うデリケートな課題なのです。

今後もこの問題の動向に注目しつつ、私たち一人ひとりが「お布施」や「寺院の役割」について改めて考える機会になるのではないでしょうか。
 


 


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