なぜ子どもは「お墓を継がない」と言うのか？親が考えるべきことと最新の供養事情
「お墓を継ぎたくない」子どもの本音をどう受け止める？
かつては、家を継ぐ人が先祖代々のお墓を守るのが“当たり前”とされてきました。
しかし現代では、「お墓は継がない」「墓じまいをしてほしい」と、子ども世代から親へ意思表示されるケースが年々増えています。
その背景にあるのは、ライフスタイルの変化、経済的な負担感、そして“供養のかたち”そのものに対する価値観の揺らぎです。
突然「お墓は継がない」と言われたとき、親としては戸惑いや寂しさを覚えるのは当然のことでしょう。
しかし、否定や説得を急ぐ前に、いま一度「子どもは何を考えているのか」「どうすれば家族として納得できる結論を出せるのか」立ち止まって考える必要があります。
本記事では、子ども世代の本音とその背景、親世代が取るべき対応のヒント、そして“新しい供養のかたち”について、具体的に掘り下げていきます。
1. なぜ子どもは「お墓を継ぎたくない」と言うのか？
子どもが「お墓は継がない」と言う背景には、現代ならではの事情があります。
主に3つの理由が多いです。
1. 経済的な負担が重いから
- お墓には管理費や清掃費、供花の費用がかかります。
- さらに、遠方のお墓なら交通費や宿泊費も負担に。
例えば、都内から地方のお墓に年2回帰ると、年間10万円以上かかることも。若い世代は住宅ローンや教育費など生活費も重く、墓の維持費は大きな負担です。
2. ライフスタイルの変化
- 仕事で遠くに住む人が増え、お墓参りが物理的に難しいケースも。
- また、未婚や子どもを持たない人も増え、「継ぐ意味がない」と考える人もいます。
総務省によれば、30〜40代の独身率は30年で約2倍に増加。昔の「継ぐのが当たり前」という価値観と合わなくなっています。
3. 供養の価値観が変わった
- 宗教に馴染みが薄い世代も増え、「お墓がないと供養できない」とは限らないと考える人も。
- 「供養は形より気持ち」と捉え、個人の意思を尊重する時代になっています。
かつての「長男が墓を守る」家制度も崩れ、「自分らしい供養」へと意識が変わってきました。
親世代が知っておくべきこと
子どもの言葉の裏には、現実的な事情と時代の価値観があります。それを「冷たい」と決めつけるのは話し合いを遠ざけるだけ。
まずは理由を知り、受け止めることが大切です。
2. 子供の気持ち：親としてどう受け止めるべきか？
「お墓は継がない」と子どもに言われたとき、親としてショックを受けるのは当然のことです。
しかし、そこで感情的になってしまうと、子どもとの信頼関係にヒビが入る可能性があります。
ここでは、親としての“受け止め方のヒント”を3つご紹介します。
1. 「気持ちを否定しない」ことが第一歩
最も大切なのは、子どもの考えを頭ごなしに否定しないことです。
「そんなのありえない」「先祖に申し訳ないと思わないの？」といった言葉は、話し合いの扉を閉ざしてしまいます。
子どもも真剣に考えた結果として「継がない」という結論に至ったのかもしれません。
まずは一度受け止めて、「そう思うようになった理由を聞かせてもらえる？」と、対話の姿勢を見せることが大切です。
2. 「守る＝愛」ではなく「理解し合う関係性」を
多くの親世代にとって、「家を守る」「お墓を継ぐ」ことは、家族への愛情や責任の証でした。
しかし、今の世代は別の形で家族を大切にする考え方を持っています。
「お墓は継げないけど、ちゃんと供養はしたい」 「形よりも、気持ちのつながりを大切にしたい」
こうした子どもの声に耳を傾けてみてください。「お墓＝家族の絆」ではなく、絆の持ち方そのものが変化していると捉えれば、少し心が楽になるかもしれません。
3. 感情的にならず、対話の機会を持つこと
お墓をどうするかは、感情だけで決めるには重すぎるテーマです。
だからこそ、すぐに結論を出そうとせず、冷静に、時間をかけて何度か話すことが重要です。
-
どうしてそう思うようになったのか
-
親として、何を大切に思っているのか
-
どんな供養の形なら納得できるのか
お互いの気持ちを少しずつ言葉にしていくこと。それが、解決への第一歩となります。
3. 「墓じまい」や「永代供養」「散骨」も視野に
「お墓を継がない＝供養が終わる」ではありません。
今は家族の形に合わせた柔軟な供養方法が選べます。
1. 墓じまいとは？
今あるお墓を撤去・更地化し、ご遺骨を別の場所へ移す（改葬）ことです。
費用は撤去費と改葬先の費用を合わせて20万～80万円前後が目安となります。
2. 永代供養って？
お寺や霊園が家族に代わって供養と管理をしてくれる形です。
一括費用で済み、後継者がいなくても安心して供養を続けられます。
3. 納骨堂って？
屋内型で都市部に多く、駅近で雨でも安心な点がメリットです。
ただし、契約年数に制限があるケースもあります。
4. 海洋散骨という選択も
ご遺骨をパウダー状にして海へ還す供養方法です。
宗教や場所に縛られない、自然志向の新しい供養として注目されています。
管理や承継が不要で、費用も比較的安価な点が大きなメリットです。
4. まとめ ―「家族のかたち」を話し合えるチャンスに
「お墓は継がない」と言われたとき、戸惑いや寂しさを感じるかもしれません。
しかし、それは単なる拒絶ではなく、今の暮らしや価値観を反映した、真剣な思いの表れです。
昔は当たり前だった供養の形も、今は「選べる時代」です。
親子のどちらかが我慢するのではなく、家族に合った新しい形を一緒に探すことが大切です。
お墓の話は、これからの家族をどう守っていくか考える貴重な機会でもあります。
怒る前にまず理由を聞く。
悲しむ前に気持ちを共有する。
そして、押しつける前に選択肢を考える。
「うちはこうしてきたけれど、あなたはどう思う？」
たったこれだけの言葉で、親子間の対話は始まります。
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